RX100について考察
今年に発売された高級コンパクトデジカメの中において、RX100に関しては今後の高級コンパクトデジカメのマーケットの方向性を左右する出来事であったと思う。単なる画質や性能について語っているサイトは山ほどあるので、マーケティングとしてみたときにどういう意味を持つのか考えてみたい。といっても個人的な偏った見方となるので念のため。
1.今までの高級コンパクト市場
2010年頃までの高級コンパクト機種は、「廉売デジカメ」と比べるとレンズ性能の高さや撮像素子が多少大きい(1/2.3型に対して1/1.7型)ことによる高画質と、写真撮影時の表現の幅を広げる機能性の高さがポイントであった。一方で、一眼レフやミラーレス機種と比べると、画質やAF速度などで圧倒的な差があった。セグメントでいえば、廉売機種、高級コンパクト、ミラーレス、一眼レフという4つのグループは、その順に性能と価格が比例していたともいえる。
2. マーケットの変化
2010年頃から活況を呈したミラーレス機や、一眼レフの入門機の価格低下によって、高性能な機種がそれなりの価格で買えてしまえるようになった一方で、スマートフォンによるデジカメ市場の侵食が急速にすすんでいった。その結果、普段使いのカメラはスマートフォンとなり、思い出作りの撮影はミラーレス(あるいは一眼)という二極化の傾向が顕著になってきた。
3.立ち位置の見直し
そのような変化はあるものの、従来からのヘビーユーザーにとって、一眼レフのサブ機としては一定のニーズがあることから、各メーカーの製品は、
1.撮像素子は従来と同様の1/1.7型(新たなレンズ開発は不要)
2.画像処理エンジンの流用(一眼レフやミラーレス機と同様、廉価版)
3.ボディデザインを微妙にいじる(液晶モニターやデザインなど)
4.アートフィルター的な味付け少々
といった、投資をかけずともそこそこリターンが見込める機種でマイナーチェンジを繰り返していた状況で、高級コンパクト機種の新型発売頻度も低下していた。
4.G1Xの登場と失敗
そのようななかで、キヤノンが1.5型の撮像素子を使用したコンパクト史上最高画質を謳った機種G1Xを発売したが、ミラーレス機並みの大きな本体サイズや、撮像素子の大きさによるマクロ撮影の貧弱さ、オートフォーカスの遅さ(従来のコンパクト機種並み)のために商売的には惨めな結果となってしまった。つまり「画質」で勝負をかけたことで、かえって一眼レフと比較されてしまい、機能面での見劣りが目立つ結果となってしまった
5.高級コンパクトマーケットの縮小
以上のような状況のなかで高級コンパクト市場で優位に立つ為には、勝負するポイントをどこに持つかが極めて重要である。しかしながら、各社もこのマーケットの新機種に投資をかけられない(つまりポートフォリオでいう負け犬ですね)ことで、従来型の製品しか作ることが出来ず、今後ミラーレスの更なる価格低下が進めば高級コンパクトとの価格逆転などによって早晩マーケット自体が消滅する可能性すらあった。
6.RX100のポジショニング
こうした逆風マーケットに突如現れたのがRX100であり、最大のポイントは1型の撮像素子とボディサイズの小ささであった。1型の撮像素子は1/1.7型の2.68倍(1/2.3型の4.07倍)の面積で、これだけ大きな撮像素子だと画質的に圧倒できるわけだが、何よりもすごいことはそれを驚く程のコンパクトサイズに凝縮したことである。
言い換えると、「コンパクトなのにすごい」という日本の家電メーカーの最も得意とする方法で、従来の機種とは一線を画すことができたのである。
7.発売後
RX100が発売されたことで、各社の高級コンパクトの新製品(つまりそこそこリターン機種)が一気に見劣りしてしまう結果となってしまった。
キヤノンのPowerShot G15、ニコンのP7700、オリンパスのSTYLUS XZ-2、PanasonicのLX7。どの機種もRX100と比較されると画質、本体サイズで見劣りしてしまう。熱心なファンがいたとしても売上苦戦は必至と考えられる。
8.これからの見通し
RX100成功の秘訣となった1型の撮像素子に対抗する為には、同じサイズ以上の撮像素子を使った新たな提案が必須であり、1/1.7型の新機種が発売されることは今後ないのではないかと考えている。
その意味で来年度の新製品には期待が持てるし、RX100の改良版にも多いに期待したいところである。高級コンパクト市場の方向性を変えたソニーの貢献には感謝したい気持ちである。
ということでRX100をGRD4の替わりに購入しようと思います。
1.今までの高級コンパクト市場
2010年頃までの高級コンパクト機種は、「廉売デジカメ」と比べるとレンズ性能の高さや撮像素子が多少大きい(1/2.3型に対して1/1.7型)ことによる高画質と、写真撮影時の表現の幅を広げる機能性の高さがポイントであった。一方で、一眼レフやミラーレス機種と比べると、画質やAF速度などで圧倒的な差があった。セグメントでいえば、廉売機種、高級コンパクト、ミラーレス、一眼レフという4つのグループは、その順に性能と価格が比例していたともいえる。
2. マーケットの変化
2010年頃から活況を呈したミラーレス機や、一眼レフの入門機の価格低下によって、高性能な機種がそれなりの価格で買えてしまえるようになった一方で、スマートフォンによるデジカメ市場の侵食が急速にすすんでいった。その結果、普段使いのカメラはスマートフォンとなり、思い出作りの撮影はミラーレス(あるいは一眼)という二極化の傾向が顕著になってきた。
3.立ち位置の見直し
そのような変化はあるものの、従来からのヘビーユーザーにとって、一眼レフのサブ機としては一定のニーズがあることから、各メーカーの製品は、
1.撮像素子は従来と同様の1/1.7型(新たなレンズ開発は不要)
2.画像処理エンジンの流用(一眼レフやミラーレス機と同様、廉価版)
3.ボディデザインを微妙にいじる(液晶モニターやデザインなど)
4.アートフィルター的な味付け少々
といった、投資をかけずともそこそこリターンが見込める機種でマイナーチェンジを繰り返していた状況で、高級コンパクト機種の新型発売頻度も低下していた。
4.G1Xの登場と失敗
そのようななかで、キヤノンが1.5型の撮像素子を使用したコンパクト史上最高画質を謳った機種G1Xを発売したが、ミラーレス機並みの大きな本体サイズや、撮像素子の大きさによるマクロ撮影の貧弱さ、オートフォーカスの遅さ(従来のコンパクト機種並み)のために商売的には惨めな結果となってしまった。つまり「画質」で勝負をかけたことで、かえって一眼レフと比較されてしまい、機能面での見劣りが目立つ結果となってしまった
5.高級コンパクトマーケットの縮小
以上のような状況のなかで高級コンパクト市場で優位に立つ為には、勝負するポイントをどこに持つかが極めて重要である。しかしながら、各社もこのマーケットの新機種に投資をかけられない(つまりポートフォリオでいう負け犬ですね)ことで、従来型の製品しか作ることが出来ず、今後ミラーレスの更なる価格低下が進めば高級コンパクトとの価格逆転などによって早晩マーケット自体が消滅する可能性すらあった。
6.RX100のポジショニング
こうした逆風マーケットに突如現れたのがRX100であり、最大のポイントは1型の撮像素子とボディサイズの小ささであった。1型の撮像素子は1/1.7型の2.68倍(1/2.3型の4.07倍)の面積で、これだけ大きな撮像素子だと画質的に圧倒できるわけだが、何よりもすごいことはそれを驚く程のコンパクトサイズに凝縮したことである。
言い換えると、「コンパクトなのにすごい」という日本の家電メーカーの最も得意とする方法で、従来の機種とは一線を画すことができたのである。
7.発売後
RX100が発売されたことで、各社の高級コンパクトの新製品(つまりそこそこリターン機種)が一気に見劣りしてしまう結果となってしまった。
キヤノンのPowerShot G15、ニコンのP7700、オリンパスのSTYLUS XZ-2、PanasonicのLX7。どの機種もRX100と比較されると画質、本体サイズで見劣りしてしまう。熱心なファンがいたとしても売上苦戦は必至と考えられる。
8.これからの見通し
RX100成功の秘訣となった1型の撮像素子に対抗する為には、同じサイズ以上の撮像素子を使った新たな提案が必須であり、1/1.7型の新機種が発売されることは今後ないのではないかと考えている。
その意味で来年度の新製品には期待が持てるし、RX100の改良版にも多いに期待したいところである。高級コンパクト市場の方向性を変えたソニーの貢献には感謝したい気持ちである。
ということでRX100をGRD4の替わりに購入しようと思います。